Thursday, August 08, 2013

「会いに行けるリーグ」のレ・コン・ビン。

今さらではありますが、ベトナムの英雄でありスーパースターであるFWレ・コン・ビンが、コンサドーレ札幌に加入しました(ソース)。東南アジア初のJリーガーということで注目度は絶大です。コンサドーレのサポーターたちの間でもかなり好意的に受け止められているようで、ウェルカムムード満載。そして特筆すべきは、他クラブのサポーターからも「がんばれ」という想いがにじみ出ているような気がすることです。何となく、いい雰囲気です。

東南アジアのサッカーをこれまで観てきたとてもざっくりとした印象ですが、
  • Jリーグに通用する選手は間違いなくいる(しかもかなり)
  • ただし、外国人枠でプレーする価値のある選手はかなり限られる
というのが率直なところです。レ・コン・ビンはTVでしか観たことがありませんので、8月11日、今週末の横浜FC戦に出場の可能性があるということで、急遽、札幌へおじゃますることにしました。レ・コン・ビンの移籍は個人的にも日本サッカー界にとってエポック・メイキングな出来事であると感じているので、現場ではどのように受け止められているのか、を肌で感じたいと思っています。

さて、これまでサッカー批評さんなどで受けてきたインタビューでも答えてきましたが、Jリーグのアジア戦略というのは、Jリーグが東南アジア各国と提携すればそれを以って終了、というわけではありません。双方間の「選手の移籍」が果たされることで、ようやく一つの意味合いが出てくるものだと思っています。

東南アジアは、欧州、特に英国プレミアリーグがむしろ文化として根付いていますから、Jリーグがカネやプレーのレベルで逆転するのはちょっとハードルが高い。いずれにしても早晩解決される問題ではありません。ですので、違った視点を持っていただくほかない、と。それが、「アジアのプレミアリーグ」としての立ち位置です。フレンドリーでかつレベルも高く、何よりもアジアでNo.1のリーグであるということ。「会いに行けるリーグ」みたいな感じでしょうか。アジアの選手を各クラブが当たり前に獲得する流れになっていけば、「東南アジアマネーの日本行き」は一気に加速すると思っています。日本の例で置き換えれば、セリエAが分かりやすいでしょうか。カズさんのジェノアでまず第一波が、ヒデさんのペルージャで第二波が来て、そのタイミングで実際にかなりのジャパンマネーが動いています。

つまり、Jリーグのアジア戦略には、
  1. Jリーグがリーダーとなって東南アジア各国と提携
  2. 各クラブが追随する形で大会やユース年代の大会に参加
  3. 選手・スタッフが相互に移籍
  4. アジアマネーをJリーグ、各クラブへ流入
という4つの段階があり、4番目まで進んだ初めての例がレ・コン・ビンというかコンサドーレなのです。すばらしい。

では、実際に東南アジアの選手を獲得すると、どんなことが起きるのでしょうか。考えられることを挙げてみます。

【スポンサー収入】
日本国内の東南アジア特需を見越したスポンサー、そして、主にその選手が所属していた国からのスポンサー収入が見込めます。前述のセリエAの時の逆パターンですね。既にコンサドーレでは1,000万円を超えるプラスが出ているようで、何とも素晴らしい展開になっています。

【放映権】
今はJリーグのアジア戦略の中で無料で放映することからJリーグを知ってもらうという段階ですが、もしJリーグに所属する東南アジア選手が増えたならば、東南アジア諸国から「買ってでも観たい!」という声が上がってくるはずです。おそらくまだ整理ができていないと思われますが、東南アジアの選手を獲得したクラブがより多くの放映権料をJリーグからもらえるという施策がもし可能なのであれば、真剣に検討するJリーグクラブがさらに多く出てくるはずです。

【自治体関連】
東南アジアからすれば日本は「まだ」憧れの地という印象があります。Jリーグクラブの都市とその国の都市との間で姉妹都市提携などを結ぶことで、活発な国際交流へと発展させることができる可能性があります。燻っている日本のモノが東南アジアで売れる可能性も出てきます。

【スポーツツーリズム】
もちろん、東南アジア諸国のファンが移籍先のクラブに応援に来ることはあるでしょう。そして、その逆に、選手の活躍を見て「行ってみたい」と思うクラブのサポーターたちも出てくるかもしれません。スタジアム周辺にイベント(今回のケースで言えばベトナムブースができたり。あるかどうか調べてませんが…)が生まれたり、それらが発展して継続的な交流会が上記の自治体とは別のムーブメントで起こる可能性があります。これもまた、スポーツツーリズムの一環である、と個人的には思っています。

いずれのケースも大事なのは「パイオニア」になることかと。どこよりも先にやったもん勝ちの、先行者メリットがとても大きいのが現状だと思います。今後、別のベトナムの選手をどこかのクラブが獲得しても、レ・コン・ビンの衝撃にはしばらく追いつかないと思われます。ですので、次に「どのクラブ」が「どの国」の「誰」を獲得するのか、それがどういった化学変化をクラブとその地域に生んでいくのか、というのは想像するだけで面白いですね。

では、逆に課題はどんなことでしょうか。

【文化的課題】
東南アジアにはイスラム教の方が多く、日本ではまだ受け入れ体制が万全とは言えません。特に問題となるのが食事の部分で、ハラルフードというミルクや魚、野菜や穀類のほか、イスラム教の作法に従って処理された牛肉や鶏肉などを食べなければなりません。実際にシンガポールのユース世代の選手たちを新潟に連れて行った時にも、食事の面ではとても神経を使いました。

【戦術的課題】
Jリーグクラブほど、緻密なプレーが要求されるところは東南アジアにはありません。個の能力ではクリアしていても、この部分で躓いてしまう可能性は十分に考えられます。ただ、こればかりは経験が必要ですので、積み重ねてもらうしかありません。

【人種差別】
外国人の少ない地域では驚いて距離を置いてしまう方もいるかもしれませんが、基本的にホスピタリティーに優れた日本に関しては当てはまらないと思います。

(追記)
【語学】
当たり前ですが世界でマイナーな日本語は通じません。ただ、英語はある国では母国語ですし、そうでない場合でも同年代の日本人よりも遥かに流暢です。なのでここも問題になりづらい部分かと思います。

逆に言えば上記のような課題しか思いつきません。ブラジル人選手が全員成功するとは限りませんので、東南アジアの選手が金銭的にプラスになった上で戦力としても成功したのであれば、それこそ大成功だと思います。

さて、今年の3月にFC琉球が獲得したマレーシア代表のワンザックという選手がいます。実はワンザックは2012シーズンはシンガポールのSリーグでプレーしていました。そしてその年のヤングプレーヤーオブザイヤーに選ばれています(実際に対戦したはずなのですが印象はほとんどなく、「いたかなあ」と思ってしまったくらいでしたが…)。まだ若いので十分な伸びしろがあるでしょうから、マレーシア人初のプレイヤーとしてJリーグ入りを目指して欲しいと思っています。

いずれにしても、アルビレックスはJリーグのアジア戦略と同じ思想でありながら、独自の世界を突き進んでいるわけです。先日も某関係者に「Jリーグは官で、アルビシンガポールは民で突き進みましょう」と、一方的に宣言させていただきましたが、まさにそんな思いです。世界の潮流のド真ん中のアジアで、色んなワクワクドキドキを提供し続けていきたい、と思うのです。


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